人間なんてダイキライ

3/10
前へ
/12ページ
次へ
それからまたひたすら走って、その敷地自体が見えなくなるまで走り続けた。 たまたま遠方地へ行く輸送車が通り、その荷台に飛び乗ってようやくその足をとめる。 仰向けになり唇の端をかるく持ち上げにやりと笑う。 「ザマァミロってんだ畜生」 いつの間にか眠っていたのか、車が止まる音で目を覚ます。 相変わらず外は雨だったが見つかるとまずい。 運転手に気づかれる前に飛び降りて、再び走り出した。 外はすでに明るくなっていて、ずいぶん遠くまで来たことをが伺える。 今まで見たことがない町並みだ。 あそこは無機質なコンクリートのだらけだったが、ここは違う。 自然のものがあふれていてすこし落ち着く。 「でもここは人間の住む場所だ…」 吐き捨てるように呟き、遠くに見える森を目指して再び走り出す。 あそこなら人間は来ないだろう。 ぎゅっとローブをしっかりと合わせてフードが外れないようにする。 そうしてようやく森の奥深くまでたどり着き、足をとめた。 木にもたれかかり、ずるずると座り込む。 大きな木は雨をしのいでくれた。 体にまとわりつくローブをここでようやく脱ぐ。 現れたのは金糸の髪。 碧い瞳。 筋の通った鼻。 少し色素の薄い唇。 白い肌。 鋭い爪。 そして獣の耳と尻尾。 本当は全部脱ぎたい所だが外で全裸になるのは勘弁だ。 しかも雨の中。 風邪を引こうとしているものだ。 ローブが含んだ水分をきつく絞る。 どれだけの力があるのか、ローブはからからになっていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加