人間なんてダイキライ

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それからまたひたすら走って、その敷地自体が見えなくなるまで走り続けた。 たまたま遠方地へ行く輸送車が通り、その荷台に飛び乗ってようやくその足をとめる。 仰向けになり唇の端をかるく持ち上げにやりと笑う。 「ザマァミロってんだ畜生」 いつの間にか眠っていたのか、車が止まる音で目を覚ます。 相変わらず外は雨だったが見つかるとまずい。 運転手に気づかれる前に飛び降りて、再び走り出した。 外はすでに明るくなっていて、ずいぶん遠くまで来たことをが伺える。 今まで見たことがない町並みだ。 あそこは無機質なコンクリートのだらけだったが、ここは違う。 自然のものがあふれていてすこし落ち着く。 「でもここは人間の住む場所だ…」 吐き捨てるように呟き、遠くに見える森を目指して再び走り出す。 あそこなら人間は来ないだろう。 ぎゅっとローブをしっかりと合わせてフードが外れないようにする。 そうしてようやく森の奥深くまでたどり着き、足をとめた。 木にもたれかかり、ずるずると座り込む。 大きな木は雨をしのいでくれた。 体にまとわりつくローブをここでようやく脱ぐ。 現れたのは金糸の髪。 碧い瞳。 筋の通った鼻。 少し色素の薄い唇。 白い肌。 鋭い爪。 そして獣の耳と尻尾。 本当は全部脱ぎたい所だが外で全裸になるのは勘弁だ。 しかも雨の中。 風邪を引こうとしているものだ。 ローブが含んだ水分をきつく絞る。 どれだけの力があるのか、ローブはからからになっていた。
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