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俺とそいつの攻防はは結局俺の負け。
身ぐるみを全部剥がされてしまった。
どこから持ってきたのか、俺に合う服をそいつは引っ張り出してきてくれて、俺は今それを着ている。
そいつはといえば暖炉に火をつけたあとキッチンに立って何かしてる。
そいつ、チビだから台の上にのぼってる。
そして俺はというとトントントン、と規則的な音を聞きながら暖炉にあたっていた。
俺と同じく色素の薄い髪は、俺と違ってまっすぐで腰くらいの長さ。
俺の髪の毛はウェーブかかってるからな。
薬とかの影響で。
あと、そいつはとにかく小さい。
俺なんかの半分だぜ半分。
それなのに負けた…ちょっとショックだ。
ガキの涙ほど厄介なものはない。
…といっても子供に会うのはこれが初めてだけど。
人間は嫌いだけどこれは怪獣って感じだ。
厄介。
そうしてふと気づく。
この家からは生活の気配が一人分しかしない。
匂いも一人分だけ。
「お前一人なのか?」
「うん、そうだよー」
なんてことないというような感じの返事を返すそいつ。
トントン、と規則的な音がとまり、今度はさっきから沸騰してた鍋の中に今まで切っていたものを入れてぐるぐるとかき回してる。
「親は」
「いないよー」
「……寂しく…ないのか…?」
言ってからハッと口を押さえる。
人間なんてどうだっていいじゃないか。
別に一人だろうが何人いようが。
俺に関係ないし。
なんでこんな事聞いたんだろ…
「えー?」
反応鈍くそんな声が聞こえてくる。
振り返ったそいつは今にも泣きそうな顔をしていて…
でも無理矢理笑っていて…
気がついたら俺はそいつの頭撫でていた。
でも撫でようとして手を上げた瞬間、こいつ思いっきり体を強張らせて目を閉じやがった。
俺が殴るとでも思ったんだろうか…?
でもそんなことされたらやっぱり撫でてやりたくなって、怖がらせないように出来るだけ優しく撫でてやった。
ようやく目を開けて俺を見たそいつの目にはやっぱり涙が溜まっていた。
「う…」
さっきは大泣きしたくせに、今度は泣くの我慢してやがる。
多分泣くのが見られたくないんだろうなって思ったから抱きしめてやった。
そうしたら俺には泣くの見えないだろ?
「我慢せずに泣け」
「さっきは泣くなっていったくせにぃぃぃ…」
さっきみたいに大声ではないけど、声をだして泣いた。
俺は泣きやむまで頭なでてたんだ。
俺、何でこんな事してんだろう?
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