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その日、ギルドは静かだった。
仲間は皆、仕事で出払っている。
そんながらんどうのギルドにサザキは居た。
只今彼は自分の拳が口の中に入るか挑戦中である。
しかし顎が不吉な音を鳴らし始めたため、彼の挑戦は未遂に終わってしまった。
手を洗い、ポケットに忍ばせていた駄菓子の袋を破く。コーンポタージュの良い香りが辺りに広がった。
彼の頭の中は空っぽだが、ポケットにはいつも駄菓子がみっちり詰まっている。
一口、それを頬張ると天井を仰ぎ、溜め息をつく。
「はぁー…暇だー…。」
さすがに遊び相手がいないと彼も静かになるらしい。良い事だ。
その時、ノックの音がギルド内に響いた。
少しためらったような小さな音だった。
「はいはーい。」
サザキは駄菓子を無理やり口に押し込み軽くむせながら、ギルドの戸を押し開ける。
そこに立っていたのは栗色の髪を伸ばした端正な顔立ちの女性。
名はマリアージュ。
今回の仕事の依頼人である。
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