亜理子と少年

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呆然とする亜理子に、少年は一枚の紙を渡した。 「好きなドアを三つあけて下さい。開けたドアの事を書いてください。」 澄んだ声が響く。 渡された紙は白紙。 それと、少年の顔をみくらべる。 なぜか。 素直に従ってしまう。 書くものを探し、がさがさと、鞄をあさる。 ない。 いつものペンケースが。 入れたはずなのに。 鞄の中身をぶちまける。 なのに。 ない。 焦るりながら、一つ一つを確認する。 そこにすっと、綺麗な万年筆が差し出される。 硬質な感じのする万年筆。受けとるとヒヤリとした。 「使ってください。」 微笑む少年は、ゆっくりと道を開ける。 亜理子は一つ目のドアを開けた。
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