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二番目は少しなやんで。
端の扉に手をかけた。
扉は思いの他重く・・ずしりとしたもの。
思いきり力を込めすぎて、扉の外に飛び出してしまう。
そこは、がらんとした美術館。
寒々しいほと整然とした美術品や絵画。
冷たい大理石貼りの床には、亜理子一人だけが立ち尽くしていた。
何か見覚えのある、息苦しい空間。
ぐるぐると取り巻く物の、一つ一つから、みられているような。
重圧。
そして足元に転がる小さなキャンバスに何かを思い出しそうになる。
そして一筋の涙が足元に滴を垂らす。
唇を噛み、亜理子は沸き上がる手に余る感情を堪えて瞳を閉じた。
どれくらいの時間がたったのだろう。痛い位の静寂。怖いほどの冷たさに、目を開けた亜理子は泣いてはいなかった。
溜め息を一つ溢すと、冷たい万年筆をしっかりと持ち、先程の紙に一言書き加えた。
『埋もれた場所』
そして再び瞳を閉じ、冷たい床に向かい軽くうつ向き・・・・涙ではなく、時間だけを流した。
そして、ふっきれた様に瞳に光を宿し、ドアをしっかりと閉め、少年の前に立った。
「本当に・・・夢の世界なのかもね。」
亜理子は呟いた。
薔薇色の唇の少年は、僅かに首を傾げたが、何も言わずただ、硝子玉の様な瞳を亜理子にむけ、そして視線を懐中時計に落とす。
懐中時計には短針しかなく、ゆっくりと五の数を指そうとしていた。
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