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鎌取玄造(かまとりげんぞう)は無表情で手術台の前に立っていた。
その部屋は清潔で広いが、明かりが小さくて薄暗いかった。
壁や天井には様々な機械が並べられ、設置されている。
そして部屋の中央に、手術台は置かれていた。
鎌取の他に何人か白衣姿の男達がいたが、彼等は部屋の中で忙しく動き回っている。
一言も声を上げず、たまに目配せをするくらいで、ただ淡々と作業を熟していた。
手術台の上には青年が一人寝かされていた。
細身な方だが身体付きは良く、顔立ちも割と整っていて、見るからに若々しい好青年だ。
衣服を身につけていなかったが、左手首にのみ装飾品が付いていた。
幅の広いブレスレットだった。
至ってシンプルなデザインだ。
銀色一色で模様も何もない。
見た限りただの金属の輪のようだった。
鎌取はそんな青年を覗き込むように眺めていた。
頬が痩せこけて色白であるその顔は、生きている人間のそれには見えず、まるで骸骨のようであった。
黄ばんだ白衣姿が更に不気味に映った。
「博士……」
白衣の男の一人が鎌取に話し掛けた。
顔は白く大きなマスクで覆われていてほとんど見えずにいた。
「うむ。では始めるか。」
鎌取はそう言うと、右手を高く挙げた。
すると、天井にある赤いランプが点灯し、部屋が赤い光で染められた。
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