運命は残酷だとは言うけれど、

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鬱蒼と茂る森の中をフードを被った1人の旅人が苔を踏みしめて歩いている。 「久しぶりだな…この森も」 男にしては高く、女にしては低い声で旅人は呟く。 マカロニ。 それが旅人の名前だ。 本名と言うわけではなく、便宜上いくつかある偽名のうちで最も使用頻度が高いのがこの名前と言うだけの話である。 「……なんだ、この臭い」 動物ではない。 ……人間だ。 人間の腐った臭いがする。 「自殺できるような場所じゃないよなあ」 国境沿いにあるこの森は旅人の往来も多い。 見てみぬふりをする者もいるだろうが、大多数の人間ならば自殺を止めようとするだろう。 本道から逸れた方向に目をやる。 臭いはそちらからする。 「…………」 ――大方夜盗に襲われた旅人だろう。 弔いくらい、してやるか。 湧いた考えに苦笑いを漏らす。 たった2年かそこらで、大層丸くなってしまったものだ。 本道から逸れた先には、開けた場所があった。 ここで煮炊きをしていたのか、猪だかの骨や、燃えカスが転がっている。 「こりゃやっぱ追い剥ぎだな……」 強くなった臭いに鼻を押さえて、辺りを見渡す。 あった。
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