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「予約もなく申し訳ない。森で倒れてたガキを保護したんだが、看ていただけないだろうか」
医者の門扉を叩くと、やせ細ったガキを見た老医者が目を丸くした。
「こりゃあ……!おい、早くこの子を風呂に入れてやりなさい!何をどうしたらこんなことになるんだ!あー、君が保護者かね?」
「本来の保護者は森で亡くなっていてな。俺はただ保護しただけだ」
「……やれやれ……物騒な世の中だ……。時に、お足はあるのかね」
すっぽりと被っていたフードを脱ぎながら、マカロニは事も無げに言う。
「一応は。……あまりに法外な金額を請求されると、あなた方を襲って逃げる羽目になってしまうんだが」
「……全く!本当に物騒な世の中だよ!あー、君。栄養剤の準備をしておきなさい。ありゃあ久しく肉しか食ってなかったな……。どういう親だったんだか、いっぺん顔が見てみたいわい」
「黙っててももうじき見れると見たがね」
「一々鼻につく奴だの、お主。綺麗な顔がもったいない」
「……そいつぁ、どうも」
乱雑に切った短い蜂蜜の髪に、アーモンド型をした真夏の空の瞳。
整った顔立ちをしているが、その表情に品はない。
育ちは良い方ではないらしい。
億劫そうに返事を返し、コートを鞄にしまう。
その時、老医者の顔が強張った。
「お前さん、バンカーなのか?」
「だったら?俺を追い出すか?」
大方鞄にしまってあった貯禁箱を見たのだろう。
苦笑混じりに言うと、老医者はゆるゆると首を振った。
「否、お前さんがどんな人間であっても、ここは人を拒んだりはせん」
「ご立派なことで」
「わしの弟がバンカーでの。あやつめ、どこかで野垂れ死んだに決まっておるわ」
「言う割には、生きてるって信じてるツラしてるぜ、じいさん」
「鋭いのも悩みものだの、若僧」
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