蜂蜜の君(仮)

運命は残酷だとは言うけれど、

応えは無く、その代わりにじわりと涙が子供の大きな目に浮かんだ。
「黄色のバンクは持ってきたが、ハンマーは持てなかったから置いてきた。死体もそのままだ。コロッケ、お前が望むなら、回復してから一緒に墓を作りに行くが」
「うん……。メンチ……メンチは……生きてるの？ね、………生きてる、よね……？」
「メンチ？……バンクのことか？それなら今は袋の中に入ってるぜ。持ってきてやるから大人しくしてろよ」
バンクの生死を問うなんて。
でもまあ幼い子供が無機物に名前を付けるのはよくあることだ。
そんな風に結論づけて、部屋を出た。

「あったあったと。……ん？」
なんか、形変わってねえか、これ。
不振に思いながらバンクの入った袋を持ち上げると、袋の中で何かが動いた。
「う、わ！？」
たまらず取り落とす。
そこから出てきたのは黄色い、豚……？
「なんだよこれ！？」
混乱する頭でも、なんとかそれを掴もうと試みる。
しかし、ぴぎぃっ！と豚は一鳴きすると、コロッケのいる部屋の方へ走っていってしまった。
「なんだアレ…！」
軽い恐怖を感じはしたが、とりあえずあの部屋に戻らないことには始まらない。

「メンチ……！」
部屋に戻ると、コロッケと例の豚が感動の再会を果たしていた。
黄色い例の豚がコロッケにすがりつき、コロッケがそれに力無く手を当てている。
「その黄色いのはバンクなのか？」
「そう、だよ。お父しゃんのバンクで、メンチって、言うんだ」
「へえ……。生きてるバンクなんか初めて見た。一体どうなってんだ？」
「………？」
「ああ、否、なんでもねえよ。ほら、これ飲んで寝とけ」
そう言って甘く作ったジュースを渡す。

「あり、がと……」
「おう。……頭、触るぞ」
宣言して、寝汗で僅かに湿っている頭をゆっくりと撫ぜる。
小僧のふにゃんと和らぐ表情に、奇妙なバンクも安心したのかベッドに小さな身体を横たえた。