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『春眠暁を覚えず』と遥か昔に誰かが言っていたらしいが、成る程、確かにその通りだと思う。
……もっとも、俺の場合は季節を問わないのだが。
「マスター、いい加減起きて下さい!!」
待ちに待った祝日で、大学もアルバイトも休みなのを良いことに温もり溢れる布団で二度寝を決め込んでいた俺の耳に聞き慣れた声が届く。
毛布に包まっているので姿こそ見えないが、声と気配ですぐ傍にアイツが来ていることがわかる。
「……あと2時間半、そんでおはようのキスをしてくれるなら考えてやらなくもない」
「お布団取っちゃいますね」
俺とのやり取りにも手慣れたもので、軽くあしらいながら素早く俺から毛布を奪う。
さようなら、俺の温もり。
「おはようございます♪」
寒さに耐え切れず起き上がれば、これも見慣れた彼女の微笑み。
おっとりとした印象を与える顔立ちと、起きぬけの男心を刺激するバランスのとれた体型。
俺の目の前にいるのは人間としての可愛らしさが揃っている『女の子』だ。
しかしまるですべての要素が計算され尽くしてあるかのような違和感。
そしてその違和感は決して間違ってはいない。
「……おはよ」
彼女は『マイロイド』。名前は恋華。
俺のパートナーである。
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