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遠くから声が聞こえてきた。いや、声というよりは叫びに近い。悲痛の叫びだ。
辺りは漆黒の闇が包み、目を凝らしても、何も見えない。
ああ、これは夢なんだ。和馬はそう思った。ただ何もない夢の中で、耳を貫くような甲高い叫び声が途切れず続いていた。
こんな夢なら早く覚めてくれ。
そう強く念じても、全く状況は変わらない。ただ暗い空間で、叫び声を聞いているだけ。それだけなのに妙に気味が悪い。
怖い。徐々に恐怖心が湧いてくる。次第に叫び声が大きくなっている気がしてきた。叫び声をあげている者が近付いてきているのだ。
怖い。怖い。怖い。
既に和馬の脳は、この恐怖から逃げることしか考えていない。
早く、早く目を覚ませ。
彼をこの悪夢から呼び起こしたのは枕元で鳴り響く携帯の着信音だった。
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