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車の中とは別人の様に、佐和子は固まっていた また、フローリングに正座だ 定まらない視線 緊張が手に取って見える 佐和子は、コンビニで買った炭酸飲料を、まるで酒のように飲む チョコをつまむ 黙ってる 「…今日なんか変だな」 「え!普通だけど!」 うわずった大きな声 今頃になって意識し出すのか 「佐和子は解りやすいな」 冷えた烏龍茶をコップに入れて渡した 「…何が解りやすいの?」 赤い顔とうろついた目、苛めたくなる キスしたら困るだろうか いや、困らせたい 抱き寄せてキスする また悪い俺が出てきた 止まらなくなる 止められそうもない ふと目を開けると、きつく目を閉じた佐和子が見えた やめよう 無理してる 「そんな心配しなくていい…何もしないから…もっとのんびりしてろ」 佐和子から離れようとした時、それを遮ったのは佐和子だった 「…嫌なんじゃないよ…あたし…」 目が合った 「…無理するな」 そんないっぱいいっぱいな顔して 「もぅ…言わせないでよ…」 蚊の泣く様な声で呟いた佐和子が愛しかった 『言わせないでよ…』 真世も言ってた どうしてこう重なるんだろう 佐和子と真世は違うのに…
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