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空気が止まってた
佐和子はフリーズしたように黙ったままで、俺は胸が痛かった
いっそ責め立てられた方がラクに別れられるのに
佐和子は我慢している
俺を困らせないためか、未練など無いのか
多分
前者だ
何分たっただろう
重い沈黙が破られたのは、佐和子の一言だった
「…帰るね」
そう小さく呟いた佐和子は、膝に置いたバックを力強く握りしめていた
「…ごめん、佐和子」
理由も聞かずに、佐和子はドアを開けた
「じゃ、ね…」
悲しさを隠しきれてない笑顔が、俺に突き刺さった
今の俺はきっと、ヒドイ顔をしているに違いない
真世…
お前はどう思う?
強がった真世を受け止めて包み込んでやれるのは、俺だけだよな
だから
これでいいんだ
佐和子はゆっくり車から離れていく
震える肩が、泣いてる顔を連想させた
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