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聞いた事のない轟音で意識が戻ると、世界は大きく変わっていた。
葉は落ちきり、木枯らしが吹き始めた季節。今は秋。三日月の輝きが眩しい。
周りには何も無かった。
焼け焦げた地面からは煙が立ちのぼり、生臭ささと肉の腐ったような臭いが立ち込めていた。
今までに聞いた事のない轟音が聞こえたかと思えば、遠くで炎の柱が紅く昇り、鳥の何十倍もの大きさの何かが空を飛んでいる。その速さは鳥を遥かに凌駕していた。
人間が来た。2人だ。
見たこともない金色の毛をした男達。着ている物は前に見た人間のよりも清潔な物。刀は差していなかった。
男達は根元で止まり、見上げる。
「What a beautiful cherry blossom it is……」
「It is wonderful tree……」
聞いた事のない鳴き声だった。前に聞いた人間の声でも、獣の声でもない。それを英語と知るのはしばらくたってからだった……
しばらく見上げていた男達は、思い出したように大きな鳥に乗り込むと、異常な速さで東の空に消えてしまった。
周りには自分のみ。それは酷く寂しく、悲しかった。鳥や獣も来ない、人間さえ来ない。孤独と言うものを始めて味わった。
巨大な鳥は空から何かを落とし、それは轟音を立てて爆炎を生む。煙が上がり、それが消えた時にはそこにあった物が全て消えていた。
どこかで人間の悲鳴が聞こえた気がした。
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