桜の記憶

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  今度は意識を手放さなかった。同族同士で殺し合う人間達の末路が見たくなった。 枝から葉は全て消え去り、新緑のかわりに純白が枝を包む。寒さは厳しくなり、四季は移ろい冬になる。 人間はまだ進歩を続けるようだ。 空には以前見た数倍はあろうかという大きさの鳥が飛び交い、土は減り、変わりに灰色の固い物が地面を平坦にした。 景色は灰色に、仲間は減った。 私よりも小さかった建物は、競うように高く、大きくなり、空の蒼さが少なくなる。 以前よりも息がし辛くなった。 マダシンポスルノカ? 私の声は誰にも届かなかった。  
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