死んでくれ/やまあり

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「死んでくれ」 なんの音もしない 静寂につつまれた部屋に一言、ぽろりと呟かれた言葉におれはその声の主をみた。 「…なに急に」 「死んでくれ」 「はあ?」 おれの瞳をじっとみつめてただ死んでくれ、なんて言う山田にため息がもれた。 なんだこいつ、おれに死んでほしいの? 「…怖い、んだ」 「なにが?」 「だいちゃんが死ぬのが」 「はい?」 ちょ、どういうこと? 山田の意味不明発言におれの頭はついていけない。 おれに死んでくれと言ったかと思えばおれが死ぬのが怖いと言った山田。 つまり、結局どうしてほしいんだ? 「いつか、だいちゃんが死んで、いなくなるのが怖い」 「……」 「いつか、俺の知らない所で俺の知らない時に、この世界からだいちゃんが消えるなんて、考えただけでも吐き気がするほど怖い。だいちゃんがいなくなるのが怖い。だいちゃんを最後までみていることが出来ないかもしれないことが怖い。だいちゃんのいない世界で呼吸をするのも怖い。」 「…やまだ、」 「だから、もういっそのこと一緒に―…」 死んでくれ、 もう何回目の死んでくれだかわからないけど、山田は再度そう言った。 あまりにも淡々と、無表情で言うから 冗談じゃないことがわかる。 そして山田の気持ちがわかる。 死んでくれ、 死なないでくれ 矛盾する言葉たちは結局、紙一重なのかもしれない。 「…いいよ、死のう」 「……え、」 「山田が死にたいなら、おれに死んでほしいのなら、おれは死ぬよ。でも、やっぱりちょっと寂しいね。死んだらどうなるのかな?死んだらどこにいくのかな?死んだら永遠に一緒にいれるのかな?死んだら山田の体温をもう感じることが出来ないのかな?死んだら山田に対する愛してるって気持ちはどうなるのかな?」 「………っ」 「それとも、死んだらまた違う世界があるのかな?もし違う世界があるんだったら、またその世界でも山田に出逢えるかな?また愛してるって言えるかな?わかんないことだらけで、ちょっと不安だけど、山田がいるから大丈夫かな?でもさ、出来れば、出来ればさ、」 「だい、ちゃん…っ」 「次の世界でも、山田のそばにいたいな。」  
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