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君は、優しく微笑んだ。
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「だいちゃん、別れよ。」
冷たい雨が降る。
さっきまでざーざーとうるさかった雨の音が一瞬音を無くしたかのように静かに聞こえた。
急に振り出した雨に俺たちは屋根のある公園のベンチに腰かけていて、俺はゆっくりそのベンチから立つ。
「……………」
「もうめんどくさいんだよね、しつこく心配されんのも、うんざりなんだ。てか、いい機会だったのかも。これでだいちゃんからも離れられるしっ…」
「……………」
だいちゃんは座ったまま何も言葉を出さない。
そんなだいちゃんに俺は思ったこともないような言葉をぶつける。
俺は立ち上がっているから下の位置にあるだいちゃんの表情は読み取れなかった。
嘘だよ、嘘だよ、嘘だよ。
こんなこといいたくない、こんなこと、思ったことない。
「もう、好きじゃない。」
好きだよ。
「………うん。」
「………、」
違うよ、嘘だよ、こんな言葉信じないで。
ねぇ、ほんとは好きだよ、愛してるよ、だいちゃんじゃなきゃだめなんだよ。
「……」
「……!だいちゃん!?」
その瞬間、急にだいちゃんは走り出して
激しく雨が降る空の下へと駆けていく。
俺も後を追うようにと屋根の下から空の下へとでていった。
ざーざー、雨が俺の髪を濡らす。服が体に張り付いていくのがわかる。
そしてだいちゃんに追い付いて手首を掴んだ。
「はぁ、はぁ…っだいちゃん、」
「…りゅうたろー、」
「………………っ」
ゆっくりとこっちを振り返っただいちゃんは、優しく微笑んでいた。
そんなだいちゃんに言葉を失う。あまりにも綺麗に微笑むから、目がはなせなくて。
「…すきだよ。」
「…え?」
「大丈夫だよ、りゅーたろ。」
「…っ」
ちゃんとわかってるから、
と優しく言うだいちゃんに、涙が溢れた。
激しく打ち付ける雨のおかげで涙か雨かわからない水が俺の頬を滑る。
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