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苦しかった、つらかった
嘘ついて、気持ち偽って、だいちゃんを突き放そうとするのは
でも、だって、俺ってだめな奴なんだ。
こんな奴じゃだいちゃんを幸せになんかできないよ。
俺なんかじゃ、こんなだめな奴じゃ、きっとだめなんだよ。
今さら後悔したって遅いのに。
俺は、最低だ。
「…おれには、りゅうたろーだけだから。」
「…………」
「りゅうたろーがおれを迎えに来てくれるまで、待ってるから」
「…だい、ちゃん、」
「待ってる、から…っだか、らっ……もし、またりゅうたろーがおれを迎えにきてくれたときは…っ、」
微笑んでいた顔が段々とみえなくなって
ふにゃりとだいちゃんの顔が歪んだ。
瞳が潤んでいて、涙が流れる。
でもやっぱり、瞳から溢れた涙は涙なのか雨なのかはわからない。
そして子供みたいにくしゃくしゃの泣き顔でだいちゃんは震えた声を出した。
「そのときは、っちゃんと、抱きしめてね…っ」
ざーー。
コンクリートに強く打ち付ける雨は騒がしいほどうるさくて
でも、何故かだいちゃんの声は一言一句ききのがすことなく俺の耳に入るんだ。
「…………っだいちゃ、ん」
「待ってる、から、俺っ、ずーっと待ってるからぁ…っ!」
くしゃくしゃな泣き顔で涙を流すだいちゃんが愛しくて愛しくて、愛しさが込み上げる。
そしてそんなだいちゃんを抱きしめようと思わず伸ばした手をぎゅうっと握る。
手のひらに血が滲むほど強く握って抱きしめたい衝動を堪えた。
今はまだ、抱きしめちゃだめなんだ。
ここで俺が抱きしめてしまったら、きっとほんとうにダメになる。
いつか、自分なりに罪を償って、だいちゃんに胸を張って愛してると言えるようになる、その時まで
「……っっ」
ぎり、っと唇を噛み締めると血の味が口に広がった。
触れたい、触れられない。
これは罰なんだ。
だから、
「「…またね。」」
その、¨いつか¨がくる時まで
¨愛してる¨の言葉と君の温もりはとっておこう。
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