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振り返った俺の顔があまりにひどかったからか、いのちゃんはびっくりしている。そしてそのまま動かない俺にゆっくり近づいてきた。
「もー、どうしたの、そんなぶさいくな顔して。」
「どうせぶさいくだもん。」
俺がさらにふてくされるといのちゃんはははっと笑って嘘だよと頭をなでてくれた。
冗談で悪態はつくけど本当は本当に心配してくれるのがわかる。
いのちゃんは、優しい。
「そういえば、今日はだいちゃんひとり?いつも山田と帰ってるじゃん?」
「う、」
ああ思いだしたら涙がでそう。
俺なんかやった?山田を怒らせること、したっけ?
「あああっ!もう、泣かないでよ!」
「う゛う゛うー」
ぽろぽろとこぼれる涙は俺が女々しい証。
こんなことで泣くなんて、俺、どうかしてる。
山田がすきすぎてちょっとのことで一喜一憂してしまう自分に嫌気がさした。
「ほーんとだいちゃんは山田がすきだねぇ」
「う、…え!?」
ほとほと呆れる、とゆうかんじでさらりといのちゃんが放った言葉におれは驚く。
え、なに、ばれてんの?
「え、なにいまさらーだいちゃんが山田にぞっこんなのは結構前からわかってるよ。たぶんみんなも気づいてるんじゃない?」
「ええ!」
「てか、山田も気づいてると思うけど。」
「えええ!!」
そ、そんな…。
そんな、ばれてたなんて…!
おれってそんなわかりやすいのかな。
「あ、」
そこまで考えた時、思わず声がもれた。
ああ、そうか。
「山田は、俺が山田のことすきって、気づいたからあんな態度…」
きもちわるい、って。
思ったのかな。あれは山田なりの拒絶なのか。
そんなんだったら俺はどうしようもないじゃないか。
「だいちゃん?どーした?」
「う、ん」
「…?あ、そういえばだいちゃん、この間いってたストーカーって『ごめんおれかえるねっ』…え!ちょっと、だいちゃん!?」
いのちゃんの言葉はなにも耳に入ってこなかった。
ただただ悲しくて。
はやくひとりになりたくて楽屋をとび出して走った。
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