第一章 常識に囚われない仲間達

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既に妹紅さんは頭が冷めているようで、脱力しながらやれやれと被りを振ると、博麗アミュレットを机に置いて戦意喪失を表明した後、退散を決め込む。 「ちょっ、逃げんじゃないわよ、まだこっちは納得しちゃいないってのに」 食堂から出てピシャリと扉を閉じる妹紅さんの背中を追いかけようとする輝夜さん、しかし足を止めて天子の方に向き直る。 「天子、それが私の武器なのよ。返して貰うわ」 「おいィ? お前ら今のセリフ聞こえたか?」 「聞こえてない」 「何かあったの?」 「あたしのログにゃ何もないねぇ」 「仏の顔を三度までっていう名ゼリフも知らないの?」 ノリの良いギャラリーを使って茶番を演出しながら、輝夜さんを煽動する天子。 効果はばつ牛ンなようで、こめかみをピクピクとさせながら輝夜さんが詰め寄る。 その一触即発の空気を察して、再びギャラリーがわっと沸く。 「なぁによ…アンタがやろうっての? 因縁の対決に割り込もうなんて、まだ早いわ」 「割り込みたくてやってるんじゃない勝手に割り込んでしまうそれが天人」 …ハタから見ていると、みんなに乗せられてしまっている気がする。 「覚悟は出来てんでしょうね」 「あまり調子こくとリアルで痛い目を見て病院で栄養食を食べるハメになる」 「…アンタ達、武器を寄越しなさい!」 みんな準備をしていたのか、盛大に色々なものが投げ込まれる。 身を低くして構え、良いアイテムを探ろうとする天子の耳は、絶望的な破壊力を誇る何かが風を切って迫る音を感じ取った。 顔の横に手を伸ばして紐を掴み取り、大きく張り出したナイロンで編まれたそれを両方の拳に嵌めた。 天子が手にしたのは…パンチンググローブ!? 「じゃあ私はこれよっ!」 対して、輝夜さんが掴み取ったのは… 「あ、あたり棒…」 先端を丸くした篦のような形に整えられた木片で、目にすると嬉しい気分になる"あたり"の文字が刻まれている。 …説明しなくてもお分かり頂けただろうか。 「で、そっちは何よ、それ本物の武器じゃない?」 チーーーーーン! 間髪入れる間もなく試合開始のゴングが鳴り響いた!
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