行間

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「領主娘様、わたしにいいさくせんが御座います。もこうさん、フジヤマヴォルケイノ、セット」 「セットかんりょう。ターゲットインサイト」 「フジヤマヴォルケイノ、バーストモード、シューッ!」 援護を求める天子に向けて妹紅さんが殺虫スプレーを構え、輝夜さんがライターを添えた。 合図と同時にスプレーから火が放射状に放たれ、天子の身体を呑み込んで火柱が立ち上がった。 「おいィーーーっ! わたしの寿命がストレスでマッハなんだが…」 燃えながら普通に応対するあの姿は今でも目に付いて離れない(心なしか嬉しそうにも見えた)。 当時、絶壁を見て男の子だと思っていた天子を、輝夜さんが蹴飛ばして卒倒させた。 さらに地面を転がるようにして蹴り続けていた絵も忘れられない(結局そのお陰で鎮火し、天子は助かったのだが)。 「いやぁ、スズメバチはきょーてきでしたね」 その後、なんとか蜂の防衛隊を全滅させられたようだが時既に時間切れ、私達は駆け付けてきた消防車と救急車に後始末を任せた。 変な空間になったので私達はミステリーを残すため人知れず家に帰ったが多分不良界で伝説になってる …それが、私達の出会いで、そしてそんなお祭り騒ぎのような日々の始まりでもあった。 ずっと、そうして皆と生きていたら、私はいつの間にか、心の痛みも寂しさも忘れていた。 ただただ、可笑しくて…。 いつまでもこんな時間が続けばいい。 それだけを願うようになった。 思い返してみると、この時は私が天子の口にする"謙虚な文体"に一番染まっていたんだ…という事に気付いた。
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