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「別に後からでいいでしょ改名利くし」
「なりません。領主娘様の場合は、縁起が良いのと名居家のご盛況にちなんだ験担ぎとする、特例ですから」
「別に私はずっと地子のままでも最初っから天子でも良かったんだが?
天人になったから天子ってあもりにも単純すぎるでしょう」
「ふふ、親類が一堂に会して案を出していた際に、僭越ながら私めが立候補させて頂きまして」
「汚いなさすが衣玖さんきたない」
天子の愚痴も笑って流しながら、衣玖さんは懐かしそうに瞳を細めて微笑んだ。
「仕方ありませんね、今回も私が決めましょう」
「にゃーん」
赤毛で立派な黒いリボンを付けた猫(やたらでかいけど)と顔を見合わせながら、衣玖さんが首を捻る。
「…りんちゃん!」
「どこかで聞いた名前ですね」
意図してはいなかったが、思わずツッコミが漏れてしまった。
「元ネタは?」
「ありませんけど」
「輝夜が反応するほど適当なネーミングになっちゃってるわよ、いいの?」
同じ事を思ったんだろうか、食い付く輝夜さんに、それをたしなめる妹紅さん。
適当かはともかく、天子のペットは、ゆっくりれいむとかにちょりとかきもんげとか、すごい顔触れになる(主に顔がきもい)。
「大事なのは名前では御座いません、名前を付ける事が大事なのです」
「なんかそれ聞き捨てならないんだけど」
天子が言った。
「え? 同じ事なんじゃないの?」
「まぁ、深く考える必要はありませんわ」
聞き返す輝夜さんにフォローをする衣玖さん。
「…お燐、か。
大した名前だと感心はするがどこもおかしくはないわね」
確かに、きめぇ丸とかれみりゃとかよりはよっぽどペットの名前っぽい。
「これは食べるでしょうか? あら可愛い」
「にゃーん」
衣玖さんが煮豆をテーブルに転がすと、何度か肉球でテシテシとパンチを繰り出した後に、ペロリと食べた。
「そんなもの食わすとか聞いた事ないので抜けますね^^;」
天子は猫を抱き寄せて自身の手前に移してしまう。
「こっちを食べさせるべきそうすべき」
帽子の上に付けている飾りの桃を差し出す(片方無くなって違和感がすごいが気にしない方向で)。
「猫に食わせる物はちゃんと考えた方がいいんじゃないの?」
「………」
天子は妹紅さんの言葉も聞こえていないのか、前足で器用に皮を剥いて果肉をかじり付く猫にじーっと見入っている…。
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