5月14日(月) 朝

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「おいィ? お前らは今の言葉聞こえたか?」 「聞こえてない」 「何か言ったの?」 「………」 「裏TELしてませんし、残って下さい;;なんて絶対言いませんよ私は」 ダメだこりゃ。 さすがに私は乗らずに、俯いて手で額を覆った。 「ここまで一緒だった私達も、その後は、散り散りになるかもね」 「少なくとも、衣玖さんは一年先にそうなっちゃうわ」 「考えたかないわね、そんな先の事は」 輝夜さんと妹紅さんも、顔を見合わせて溜息を漏らす。 「そうですね…」 苦笑を浮かべ、衣玖さんが口を開く。 「今がずっと続けば…いいんですけどね」 奇しくも、それは私の願いと同じものだった。 それは、なんとも心強い一言のように感じた。 衣玖さんがそう願うのなら、本当にそうなるような気がした。 「ねぇ、昔みたいに、皆で何かしませんか?」 だから私は、思わずそう提案していた。 「どったのよ、藪から棒に」 「何かって?」 「ほら、昔、何かを悪に仕立て上げては近所を闊歩してたじゃないですか。 妖怪退治とか言って」 「あぁ、一番ハマってたのは、早苗だったわね」 妹紅さんに補足され、赤面する。 でも、それは確かに夢中になって過ごしていた日々の、かつての私達の冒険の記憶として、胸の中にいつまでも残っていた。 そして、衣玖さんならもう一度、そんな胸躍るシナリオを演出してくれると思った。 10年近い月日が過ぎても、私と同じ気持ちで居たのだから。 そして、今も衣玖さんは、私達のリーダーだったから。 「何か子供染みちゃいないかしら?」 「あら、人が演劇ごっこに惹かれるのは、今も昔も変わりの無い事です。 これは言うなれば、ロールプレイング」 「おっ? そう言われると引けないわね」 不意に聞こえた一言で輝夜さんも乗り気にさせてしまう。 顔を前に向けると、そこには溝の前で屈む衣玖さんの姿。 「では…」 その手が何かを拾い上げ、指先でスピンを掛けて浮かせた。 「野球をしましょう」 それは、茶色くくすんでしまった白球だった。 「へ…」 「はぁ?」 「お前それでいいのか?」 私以外はその言葉が理解出来なかったようで、怪訝な声を上げている。 「これに決めました」 もう一度皆に向き直り、そう告げた。 「野球チームを作ります。 チーム名は…リトルバスターズ」 同じ名称を名乗ってお祭り騒ぎを繰り広げたその日々が、再び始まろうとしていた―――。
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