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「おいィ? お前らは今の言葉聞こえたか?」
「聞こえてない」
「何か言ったの?」
「………」
「裏TELしてませんし、残って下さい;;なんて絶対言いませんよ私は」
ダメだこりゃ。
さすがに私は乗らずに、俯いて手で額を覆った。
「ここまで一緒だった私達も、その後は、散り散りになるかもね」
「少なくとも、衣玖さんは一年先にそうなっちゃうわ」
「考えたかないわね、そんな先の事は」
輝夜さんと妹紅さんも、顔を見合わせて溜息を漏らす。
「そうですね…」
苦笑を浮かべ、衣玖さんが口を開く。
「今がずっと続けば…いいんですけどね」
奇しくも、それは私の願いと同じものだった。
それは、なんとも心強い一言のように感じた。
衣玖さんがそう願うのなら、本当にそうなるような気がした。
「ねぇ、昔みたいに、皆で何かしませんか?」
だから私は、思わずそう提案していた。
「どったのよ、藪から棒に」
「何かって?」
「ほら、昔、何かを悪に仕立て上げては近所を闊歩してたじゃないですか。
妖怪退治とか言って」
「あぁ、一番ハマってたのは、早苗だったわね」
妹紅さんに補足され、赤面する。
でも、それは確かに夢中になって過ごしていた日々の、かつての私達の冒険の記憶として、胸の中にいつまでも残っていた。
そして、衣玖さんならもう一度、そんな胸躍るシナリオを演出してくれると思った。
10年近い月日が過ぎても、私と同じ気持ちで居たのだから。
そして、今も衣玖さんは、私達のリーダーだったから。
「何か子供染みちゃいないかしら?」
「あら、人が演劇ごっこに惹かれるのは、今も昔も変わりの無い事です。
これは言うなれば、ロールプレイング」
「おっ? そう言われると引けないわね」
不意に聞こえた一言で輝夜さんも乗り気にさせてしまう。
顔を前に向けると、そこには溝の前で屈む衣玖さんの姿。
「では…」
その手が何かを拾い上げ、指先でスピンを掛けて浮かせた。
「野球をしましょう」
それは、茶色くくすんでしまった白球だった。
「へ…」
「はぁ?」
「お前それでいいのか?」
私以外はその言葉が理解出来なかったようで、怪訝な声を上げている。
「これに決めました」
もう一度皆に向き直り、そう告げた。
「野球チームを作ります。
チーム名は…リトルバスターズ」
同じ名称を名乗ってお祭り騒ぎを繰り広げたその日々が、再び始まろうとしていた―――。
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