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「竜宮の使いにもまだ詳しい情報が入っていませんが、唯一伝わっているのは、試合中に何かが起こったという事だけで…。
そして、"限られた野球のルールの中で勝利条件を満たしただけ"という一文のみです」
その場に居た全員が背筋も凍るような悪寒を覚え、驚きが鬼なった。
「で、完全にほとぼりが冷めたこの期間、使わせて頂こうという訳ですね」
「早い話が、乗っ取るってわけよね」
さっそく着物の袖元を捲り上げながら、輝夜さんが前に出る。
「ちょっとの間だけですね」
「とりあえず軽ーく掃除をして、チーム結成祝いと参りましょう。
サナさん、カグさん、やってしまいなさい」
何気に語呂が良い。
骨が折れそうに感じた室内の埃の撤去だが、衣玖さんのエレキテルを調整した静電気で埃を固めて、思ったより楽に除去する事が出来た。
「ふう…。これ以上は綺麗になりそうも有りませんね」
周囲の壁やロッカーなど、立体的に視覚に写る部分を隅々まで濡れ雑巾で拭いて埃を払うも、染み付いた部分の汚れは取る事は出来なかった。
「サナさん、カグさん、もういいでしょう」
衣玖さんが音頭を取りながら、バケツの水に浸した雑巾を強く絞り、窓枠に掛けていた。
「ところで、人が減ってない?」
既視感のある室内に欠けた要素を探しながら、輝夜さんが問い掛けた。
「あぁ、天子なら、私に雑巾とモップ渡して帰っちゃいましたけど」
「な、なんだってー!
ちょっと早苗、どうして止めないのよ…三人で野球は出来やしないでしょーよ!」
「いや、LSのフレからリアルTELで呼び出されたとか何とか…。
それにどのみち四人でも出来ませんよ」
「たすけてえーりーん!
あーもー、どうすんのよー衣玖さーん」
途方に暮れた輝夜さんは、衣玖さんの指示を仰ぐ。
「私にいい作戦が御座います」
「なによ、さすがじゃない、打つ手があるのね」
余裕有る笑みを見せながら、コホンと勿体ぶった咳払いをする衣玖さん。
「三人でします」
「えー」
「えー」
…なぜか延々とノックを受けるはめに。
「輝夜さんもアニメの録画セッティングがあるとかで…」
「私にいい作戦が(ry」
「えー」
みなまで言う前に察しが付いた。
そしてノックは二人きりで続いた…。
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