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「あのですね、何故進学に向けて一番忙しい私が一番一生懸命なんですか!」
「いや、そんな一方的にキレられても…」
夕食の時間となり、再び顔を合わせる一同。両手でダンッ、と机を叩き椅子に座る衣玖さんを、輝夜さんが宥める。
「早苗さんを見習って下さい、私のノックを受け続けて、まぁ、こんなに泥だらけに」
「逝くの必死な粘着を受けているのは何ともアワレね」
非協力的な上に取り付く島もない感想をいう恥知らずな天人がいた。
「二人が発案者なんだから続けるのは結構さ、だけど部活で忙しい人間まで巻き込んで貰いたくはないわね」
妹紅さんは未だに身を引いているが、この人には無理強いは出来そうもない。
「なんだってのよ、アンタ…。
部活もやってない萌えオタは暇でしょうから、球拾いがお似合いだってーの!?」
「輝夜さんの言い掛かりって、ときに金を払ってまで見たくなるほど素晴らしい言い掛かりですよね…」
「それほどでもない」
「それは私の持ちネタなんだが? 警察の魔の手がのぶている以上著作権からはのげられない訴えられたら色々調べられて人生がゲームオーバーになる」
お前が言うなとか色々ツッコみたいが、私としても都合が悪くなるので放っておこう…。
「そもそも、どうして野球なのよ?」
混乱した場を仕切り直すように妹紅さんが問う。
「あら、それを言ってませんでしたね」
「ちなみにそこに関する部分を何も聞いていない」
衣玖さんが、ふぅ…と軽く息を漏らすと、一呼吸開けて周りを見回す。
次々に目を向けられ、天子や妹紅さんもそちらに誘導されて視線を戻した。
「私はここのところ、ずっと竜宮の使いの仕事で奔走していますが…。
ふと、何をやっているのだろう、と思う時もありましてね」
両手を膝の上で合わせ、机の上の割り箸の束を見ながら、ぽつりと衣玖さんが話し始めた。
「これから竜宮の使いとしても中枢に組み込まれていき、幻想郷中を天狗のように駆けずり回るようになるんでしょうね…それだけは何となく分かります。
それは空気に流され、漂っているという事です。周りがそうし始めているのに気付き、だから自分もその流れに沿おうとしているのです」
思想を巡らし、悟りを拓いたような衣玖さんの語りに、輝夜さんも妹紅さんも顔を見合わせる。
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