第一章 常識に囚われない仲間達

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「いくさんが帰ってきたぞーーーっ!」 …遠くからの声が空っぽの頭の中でぐわんぐわんと響き、私は呼び覚まされた。 寮内放送でもなく、しかし明確に寮の一階全体に伝える為の絶叫だが、それが指し示す意味も眠気で判然としない。 寝ぼけ眼を擦り、目を凝らして枕元の目覚まし時計を覗き見ると、短針が2時を回ったところだった。 明日の授業に備えて予習や準備をして、ようやく熟睡し切ったところでこうして起こされるというのは、頭がおぼつかない中では悪い冗談としか思えない。 「ついにこの時が来たようね」 …が、続いて聞こえてきた、喜びに打ち振るえる声で目が覚める。 すとっ、と軽やかな動作と物音で、それは床に飛び降りていた。 「輝夜さん…。 こんな時間にどこに行くんですか…」 二段ベッドの下段から顔を上げ、呼び止めながら聞いてみる。 丁寧に毛先が切り揃えられたおかっぱ頭で、後ろ髪はスラリとした腰元まで達する長髪、そして紅葉模様の着物の上にピンクのシャツを羽織った出で立ちの相手が、ドアに手を掛けながらこちらを返り見た。 「じゃれ合いよ?」 「はい…? こんな夜遅くに…どちらで?」 「ここ」 ただ一言、親指で床を指し示しながら笑顔を浮かべる。 (ひょっとしてそれは私に Fack You と言っているんですか?) そんな事を考え困惑していると、聞き直す間もなくバタンと扉が閉まる。 顔を上げるともう相手の姿は消えていた。飛び出して行ってしまったようだ。 「ここって…まさか寮内? …うわぁ」 ようやく相手の一言が示す意図を察すると、私は事態の重大さに気付き、寝間着のままで慌てて後を追った。 廊下の向こうからは激しく暴れ回る音と、何やらビスビスッと鋭いものが強く打ち付けられる音が続いている。 食堂に入ると、深夜だと言うのに人だかりが出来て賑わっていた。 大半の生徒は私と同じく騒動に巻き込まれたようで、寝間着姿のまま野次馬の流れに呑まれて次々と食堂の入り口から溢れ出てくる。 そして野次馬が取り囲む輪の中には、案の定大立ち回りを繰り広げる、二人の姿。
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