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「このままやるの?」
「内容は変われど、私とアンタの勝負に変わりはないでしょーよ」
渦中の二人は再び距離を取って顔を見合わせた。
互いにところどころ掠めた弾によって衣服が破れているが、その隙間から覗く素肌に傷は無かった。気付くと、輝夜さんが手で抑えていたはずの、首の夥しい出血も既に止まっている。
要するに、不老不死の存在…これこそが蓬莱人。二人の私闘が喧嘩の範疇を超えている理由である。
「………」
ゆっくりと瞼を閉じる妹紅さん、その周囲を様々なアイテムが飛び交う。
直感で捉えるようにしてそのうちの一つを掴み取った。
「なんだあれは? 手裏剣か!?」
妹紅さんがその手に武器を掲げている事に、おぉーっ! と歓声が上がる一同。
手の平に納まるサイズの正方形をしており、妹紅さんが壁に向けてそれを投げつける。すると、まるで吸い込まれるように鋭いカーブの軌道を描き、プリントを留めているピンのド真ん中に見事突き刺さる。
「これで引き裂いていい?」
「なりません。そのまま投げて使って下さい」
「………」
威力は低いが、狙ったところにしっかり届くホーミング能力付き。博麗アミュレットだ。
妹紅さんの武器が確定したところで、皆の注目が今度は輝夜さんに向く。
その手に妙な物体をぶら下げたまま、固まっていた。
「なぁ、輝夜よ…」
「なによ」
「お前はどうしてそんな饅頭を持ってるの?」
「ゆっくりしていってね!!!」
「…武器よ」
「え? なん…だと…?」
「私の武器だってんのよ。何か文句あんの?」
頭に大きなリボンを付けて、どや! と自己主張でもしたげな表情で喚く生首。その頭頂を鷲掴みにして立ち尽くす輝夜さん。
「いや、むしろ文句を言いたいのはこっちの方なんだけど…どうやって戦えばいいのよ」
「饅頭で戦うこと」
狼狽する輝夜さんに一言、衣玖さんが説明する。
「どうしてこうなった…」
チーーーン! と、呼び鈴の音がゴング代わりに食堂に響いた。
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