転落人生

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吉田くんが辞めて一ヶ月梅雨も明け夏に近付いた頃、母親から電話が来た。 『お盆にうちに帰って来なさいよ。今年はおじいちゃんの13回忌で北海道の叔母さん達も来るんだから!』 「だから今の段階じゃ決められないの。仕事だってあるんだから。行けそうなら連絡する!じゃぁね!」 『あ!こら!キヨ――ー』 ガチャン と携帯を切って舌を出す。少し肌寒く感じたのでキヨは薄めのジャケットを羽織った。最近母親から帰宅時間を狙った電話が多くてほとほと困っている。 昼間とは違って見える街並みを眺めながら、キヨは自然とため息を吐いた。 ―――家族のことを考えるとため息が出るのは何でなんだろう。
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