PROLOGUE

1/1
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ

PROLOGUE

どこまでも続く、茜色の空。切ないような赤色から深深とした紫へのグラデーションが印象的な景色だった。 その沈みゆく太陽に、影が3つ映し出される。 大きな影、 小さな影、 中くらいの影。 その3つの影は、なぜか寂しげに足元を見つめていた。平らではなく、不自然に盛り上がっている地面を。 突然、張り詰めていた糸が切れたかの様に小さな影が泣き出した。 「なんでポン太は死んじゃったの? なんでポン太を埋めちゃったの?」 大きな影と中くらいの影は困った様に顔を見合わせ、しゃがみこむ。 「ポン太はね、もう沢山幸せになったの。 あの体の中には沢山幸せが入ってるんだよ。」 中くらいの影は優しく諭すように、小さな影に語りかけた。 「そうだよ。」 続いて大きな影が小さな影の頭を撫でた。 「土に還って、もう一度この世界に戻ってくるんだ。 建基(けんき)との幸せな思い出を、また別の人にも分けてあげる為にね。 だから建基。ちゃんとポン太が還って来れるように、バイバイしようね。」 また、小さな影は大きな声で泣き出した。地面に出来た出っ張りを、愛でるように両手で撫でながら。 建基と呼ばれた小さな影が泣き止む頃には、満天の星空と静かな黒が空を埋め尽くしていた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!