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PROLOGUE
どこまでも続く、茜色の空。切ないような赤色から深深とした紫へのグラデーションが印象的な景色だった。
その沈みゆく太陽に、影が3つ映し出される。
大きな影、
小さな影、
中くらいの影。
その3つの影は、なぜか寂しげに足元を見つめていた。平らではなく、不自然に盛り上がっている地面を。
突然、張り詰めていた糸が切れたかの様に小さな影が泣き出した。
「なんでポン太は死んじゃったの?
なんでポン太を埋めちゃったの?」
大きな影と中くらいの影は困った様に顔を見合わせ、しゃがみこむ。
「ポン太はね、もう沢山幸せになったの。
あの体の中には沢山幸せが入ってるんだよ。」
中くらいの影は優しく諭すように、小さな影に語りかけた。
「そうだよ。」
続いて大きな影が小さな影の頭を撫でた。
「土に還って、もう一度この世界に戻ってくるんだ。
建基(けんき)との幸せな思い出を、また別の人にも分けてあげる為にね。
だから建基。ちゃんとポン太が還って来れるように、バイバイしようね。」
また、小さな影は大きな声で泣き出した。地面に出来た出っ張りを、愛でるように両手で撫でながら。
建基と呼ばれた小さな影が泣き止む頃には、満天の星空と静かな黒が空を埋め尽くしていた。
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