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一言で言い現せば、そこは所属"砂漠"と呼ばれる場所だった。
混乱する頭を何とか抑え込み、涌哉は再び現状を把握しようと頭を働かせる。
彼の視界に映るのは、──薄い肌色とでも表現すれば良いのか。砂のみが延々と広がる世界、砂漠だった。
辺り一面360度どこもかしこも砂・砂・砂。目に映る景色は、砂の海で。存在するのは、僅かな起伏のみ。
背の高いビルも、ファンタジーな車も、いつもは面倒としか感じない清掃用のロボットも。見慣れた全てが存在しない、完全に涌哉の知らない世界なのだ。
目の前の景色は、太陽から発せられる熱と地面からの照り返しで、蜃気楼の如くゆらゆらと揺らぐ。
手を伸ばせば消えてしまうのではないか。そう思える様な目の前の現状に、
「…夢なら覚めてくれれば嬉しいんだけどな…。」
涌哉は苦笑いを浮かべて力無く呟くと、その右手をゆっくりと伸ばす。
しかし、涌哉のそんな想いも虚しく、彼の右手は虚空を掴んだ。
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