3月課題・【情景描写-自然-】

4/4
前へ
/11ページ
次へ
が。 「…あれ?」 不幸中の幸いとでも言うべきか。涌哉は、あることに気が付く。 それは、 「…暑くない…。」 そう。暑さを感じないのだ。 目に視覚として入って来る情報では、目の前の映像は砂漠特有の高温によりゆらゆらと揺らいでいる。 しかし、空を掴んだ彼の手に残った感触は、うだるような熱気ではなく。まるで森の中にでもいるかの様なヒンヤリとした空気だった。 人間は、視覚に頼り過ぎている生物である。そのせいか、視覚からの誤った情報には騙されやすい。 今回の涌哉もそれと同じで、視覚から入って来る情報により、触覚が騙されていたのだ。 (何らかの超能力か…政府が実験でもしてるのか…。確率的には前者のが高いな。) が、気付いてみれば容易い。自身は全く汗などかいていないのだ。 手に入れた情報から、簡単に現状を推理しなおす涌哉。 少なくとも、当初思っていたよりは容易い状況な様だ。 「…ま、取り敢えずは歩き回ってみるか。」 何とかなる。 そう確信した涌哉は、先程迄の様な困惑した瞳では無く。いつもの力強く輝く瞳で、解決への一歩を踏み出した。 底無し沼の様にすら感じられていた延々と続く砂の世界が、何故か今は少し輝いて見えた。 ~fin~
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加