4人が本棚に入れています
本棚に追加
が。
「…あれ?」
不幸中の幸いとでも言うべきか。涌哉は、あることに気が付く。
それは、
「…暑くない…。」
そう。暑さを感じないのだ。
目に視覚として入って来る情報では、目の前の映像は砂漠特有の高温によりゆらゆらと揺らいでいる。
しかし、空を掴んだ彼の手に残った感触は、うだるような熱気ではなく。まるで森の中にでもいるかの様なヒンヤリとした空気だった。
人間は、視覚に頼り過ぎている生物である。そのせいか、視覚からの誤った情報には騙されやすい。
今回の涌哉もそれと同じで、視覚から入って来る情報により、触覚が騙されていたのだ。
(何らかの超能力か…政府が実験でもしてるのか…。確率的には前者のが高いな。)
が、気付いてみれば容易い。自身は全く汗などかいていないのだ。
手に入れた情報から、簡単に現状を推理しなおす涌哉。
少なくとも、当初思っていたよりは容易い状況な様だ。
「…ま、取り敢えずは歩き回ってみるか。」
何とかなる。
そう確信した涌哉は、先程迄の様な困惑した瞳では無く。いつもの力強く輝く瞳で、解決への一歩を踏み出した。
底無し沼の様にすら感じられていた延々と続く砂の世界が、何故か今は少し輝いて見えた。
~fin~
最初のコメントを投稿しよう!