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殺風景な丘の上、睨み合うのは二人の男達。
一人は"いかにも"な金髪の男。筋骨隆々で、顔には歴戦の傷痕の様なものが幾つも刻まれている。
男の名は…此処ではAとでも仮定しておこう。
対するは、見た目お世辞にも"強い"とは言えない16~7歳程度の少年。
その腕は細く、色も白い。顔の表情も常に柔らかく、世間で言われる所の『優男』という部類に入るだろう。
少年の名は、Dとでも置いておく。
そんな接点の無さそうな二人の男達が相対しているのには、ある理由が関係していた。
それは、
「D。俺は今日こそテメエを倒すぜ。そして今度こそ、道場当主の座を奪い取る!!」
そう。
彼等が所属するのは、所属人数200人を有する、この地方最強とも言われる道場・『新月流』。
時は大乱闘時代。
"強さこそが正義"と言われるこの時代、全ての男達は全国各地に多数存在する道場の何処かに所属し、己が拳を磨き上げていた。
この二人の男達も例に盛れず、自分達の腕を磨こうと切磋琢磨し、遂には道場の二強とまで呼ばれる様になったのだ。
が、
「ハァ~…それ何回目ですか、Aさん。いい加減奪い取って下さいよ。僕は当主なんて、興味ないんですから。」
ため息混じりに、Dはそう呟く。
実は彼等、幾度となく"当主の座を賭けて"という名目で戦い合っているのだが、勝負はDの七戦七敗。毎回毎回、Aは完膚無きまでに叩きのめされてしまうのである。
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