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しかし、その興味無さげな態度が、Aの怒りを更に増幅させる。
実際、Dからすれば本気で興味が無いため、何を言われようとどうしようもないのだが…。
毎度毎度必死に挑み、そして見事散って行くAからすれば、悔しいことこの上ないのだろう。
そして遂には、
「なら今日、ここでテメエを倒してやるよ!!」
Aは地を蹴り、勢い良くDへと向かって走り出す。
突然切って落とされた戦いの幕に、Dは、
「はぁ~。まったく…猪みたいな人ですね、貴方は。」
深くため息をつくと、猪突猛進に突っ込んで来るAに対して構えを取る。
その構えは、凡そ自然体と言われるそれに近い。
両の腕はダラリと垂らし、体は右足を前にして軽く前傾している状態。とてもではないが、戦いに向いているとは思えない、そんな構え。
大体、体格の時点でDはAに圧倒的に敗北しているのだ。これでは、勝負は見えた様なものと言わざるを得ない。
しかし実は、一見戦いに向かないこの構えこそが、Dの強さの秘訣だったのだ。
10mの距離を僅か三歩で詰めるという驚異的な脚力を見せたAは、持った勢いそのままに、その太い右腕をD目掛けて振り抜く。
威力、スピード共に申し分ない一撃。
しかし、
「──ワンパターンですね、貴方も。」
誰が予想しただろうか。
Dは避けるでも無く、受け止めるでも無く、カウンターを入れるでも無く。
Aからの一撃を、"受け流した"のだ。
Aの拳に、自身の右掌を軽く触れさせる。その掌に感触を感じたと同時、右肩を後ろに引く事により衝撃を吸収。完全に相手の攻撃をいなして見せたのだ。
これは、思っている程簡単なことではない。
高い反射神経と柔軟な対応力、そして度胸。これらが揃って初めて使うことが出来る、新月流の奥義・『無月』。
これこそが、ひ弱なDが道場の跡継ぎの座まで登り詰めた所以だった。
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