4人が本棚に入れています
本棚に追加
完全にタイミングを狂わされたD。そのDの無防備な脇腹に、
「──ッグ…っ!!」
Aの蹴りが刺さる。
その一撃に、Dは大きく後ろに吹き飛ばされ、まるで蹴られた空き缶の様に地面を転がって行く。
元々、Dは体格に恵まれていない。全ての攻撃を受け流す為、攻撃を受けないことを前提としているのだが…。
そのDに突き刺さった一撃は、彼に甚大なダメージを蓄積させた。
(…アバラが何本かイッたかな、これは…。)
痛む体を引きずりながら立ち上がるDは、苦笑いを浮かべながら自らのダメージを確認する、少なくとも、軽い傷ではない。
そのDに対し、
「ハッ…形勢逆転だな!!」
勝ち誇った笑みを浮かべ、高らかに宣言するA。
しかしDは、
「…かも知れませんね。だけど、勝つのは僕ですよ。」
その顔には、笑み。先程の様な余裕の笑みに、楽し気なそれを混ぜて。
何故なら彼には、
(本当は、まだ取っておきたかったんですけど…仕方ないですね。)
未だ見せたことの無い、"とっておき"があるのだから。
勝利の為に。彼はまた、構えを取る。
それを見たAは、
「チッ…。いつまでもテメエが上だと思うなよ。調子に乗ってんじゃねえ…ぞッ!!」
三度、Dに向かって真っ直ぐに突っ込んで行く。
7m。
5m。
そして、3m。
グングンと縮まって行く距離。しかしDは、
(まだ…まだだ!!)
未だ動こうとはしない。
必殺の間合いまでは、まだ遠いのだから。
そして遂に、
「これで──終わりだ!!!」
…1m。
Aがトドメを刺そうと拳を振り上げた、その瞬間。
「──此処!!」
Dは、ダラリと垂らしていた右腕を、A目掛けて力一杯振り抜いたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!