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非力なDの狙いは一つ。
それはおよそ、人体における"急所"と呼ばれる場所。急所ならば、力は関係ないのだから。
そしてその中でも、現時点で最も威力が出るであろう部位。
そこは、ヘソの少し上。Aの体重と重力も加わって高威力になるであろう場所の名は、
「…ッ!!ゴハッ!!!!」
"鳩尾"、だった。
無防備な体に強烈な一撃を受けたAは、言葉にならない叫びと共に口から胃液を溢し、地に崩れ落ちる。
そしてそのまま、その意識は暗闇の中へと消えて行った…。
これこそが、Dの隠していた必殺技。『無月』を極めた者のみが使用可能な最終奥義。
防御不可能なその技の名は、『無月・天地』。
彼が『新月流』の免許皆伝に至った技だった。
地に伏せるAを一瞥したDは、傷を負っている左脇を押さえながらAに背を向ける。
「…加減はしましたからね。一時間もすれば意識は戻るでしょう。」
届かない言葉を、意識の無いAに投げ掛けるD。
そう呟いた後、少し間を置き彼は再び口を開く。
「…貴方は言いましたね。『当主になる』と。けれど僕には、そんなことはどうでもいい。
一流派の当主になど、僕は興味はない。僕が目指すのは、この時代"最強"の名なんだから。
その為に僕は、勝ち続ける。勝ちたいんじゃない。勝たなきゃいけないんだ。
それが僕が僕である為の…たった一つの、存在意義なんだから。」
自らの覚悟を、決意を口にしたDは、最後にチラリとAを見ると、その場を後にすべく歩き出す。
行き先は決まっていない。
ただ、目的は決まっている。
より強くなるなる為に。
その為に、一人の少年は再び歩み始めた。
~fin~
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