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「う…っ。」
真っ暗だった自らの視界に、少しずつ白い光が差し込んで来る。
どうやら、自分は気絶していたらしい。
そのことを認識すると、少年・藍住涌哉(アイズ ミワクヤ)は頭を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
「確か俺は──」
未だ覚醒していない頭で、自分が意識を失うまでの経過を思いだそうと記憶の引き出しを探る。
…確か街中で、自分の狙いであった犯罪者の女と遭遇し、戦いを初めて。けれども相手の持つ良く分からない超能力に錯乱させられて、それから──。
そこまで考えた所で、彼の頭は完全に覚醒。全てを理解した。
そして彼は、
「一体…どうなってんだ、これは…?」
自分が置かれている今現在の状況に。自分の視界に入る、辺りの景色に。
言葉を失い、目を見開いて絶句した。
彼が意識を失うまで立っていたのは、彼が良く知る街中の一角。
背の高いビルがあちらこちらに建ち並び、広い道路をリニアモーターカーの様に地面から僅かに浮いた車が自由に走り回り。辺りを清掃用のロボットが徘徊する、地は赤褐色のレンガで彩られた、美しい街並みの。
科学技術が世界で最も発展している、日本の端に位置する島、閃神島(センジンジマ)にいた筈だった。
しかし。
「此処は…何処だ…?」
彼の目の前に広がる景色は、それとは明らかに違っていた。
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