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ガラッと甲高いドアの音がする中、私は足を進めた。
個室にしては広すぎる部屋に、一つだけベッドがある。
『ピース』という名前には、カケラという意味があるらしい。
つまり、パズルのピースのようなものだ。
私は、静かに近づき、顔を恐る恐る覗く。
「……ん……」
私は驚いた。
その彼は、とてもとても、私にはストライクだったのである。
私がこんな言葉を使うなんて、明日には雪でも降るのではないかと思える程だ。
でも、私の目に移る眠り王子は、まさに王子。
イケメンという言葉にはもったいない程でもある。
「……なんで……」
その気持ちの裏腹に、私の心には、闇のような悲しみが生まれた。
そう。
このように顔がよく、背もあるだろう彼は、これまで眠っていたのだ。
いや、今でも。
今、私の前でも。
彼が普通に産まれて、普通に育ったら、どんなにいい人生を歩んでいただろう。
こんな、私とは違って。
彼は、聞いていたように、産まれた時から眠っているとは思えない程に健康的な身体で、痩せ細びてすらいない。
彼のこれは、病気なのか、障害なのかすら分かっていないという。
「……そんなの、もったいなさすぎる……」
私より、輝く人生<Life>を送れたはずなのに。
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