輝く夜空

3/5
前へ
/8ページ
次へ
ガラッと甲高いドアの音がする中、私は足を進めた。 個室にしては広すぎる部屋に、一つだけベッドがある。 『ピース』という名前には、カケラという意味があるらしい。 つまり、パズルのピースのようなものだ。 私は、静かに近づき、顔を恐る恐る覗く。 「……ん……」 私は驚いた。 その彼は、とてもとても、私にはストライクだったのである。 私がこんな言葉を使うなんて、明日には雪でも降るのではないかと思える程だ。 でも、私の目に移る眠り王子は、まさに王子。 イケメンという言葉にはもったいない程でもある。 「……なんで……」 その気持ちの裏腹に、私の心には、闇のような悲しみが生まれた。 そう。 このように顔がよく、背もあるだろう彼は、これまで眠っていたのだ。 いや、今でも。 今、私の前でも。 彼が普通に産まれて、普通に育ったら、どんなにいい人生を歩んでいただろう。 こんな、私とは違って。 彼は、聞いていたように、産まれた時から眠っているとは思えない程に健康的な身体で、痩せ細びてすらいない。 彼のこれは、病気なのか、障害なのかすら分かっていないという。 「……そんなの、もったいなさすぎる……」 私より、輝く人生<Life>を送れたはずなのに。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加