輝く夜空

4/5
前へ
/8ページ
次へ
白亜の部屋の中、唯一の第二として存在している小さな椅子に、私は座る。 しばらく、私は彼の整った顔を見つめていた。 彼の両親は、この姿を見てこの彼から逃げてしまったらしい。 名前すらも決めないで。 母親のお腹の中でも異変があったらしい。 普通はお腹を蹴るような動作をするはずが、何もしなかったらしい。 「……でも、たったそれだけで逃げるなんで、世界は理不尽すぎるよ……」 自然と涙が出てしまう。 この世界の人口の中のミジンに一つの命が、捨てられたのだ。 そう思うと、この人は私よりも不幸な人なのかもしれない。 親すらいなく、笑うことも、泣くことも、私のように孤独の世界にたたずむことも。 この人にはできないのだ。 まるで、羽のない蝶々のように。 羽がなければ、美蝶のような美しさも、蛾(が)のような怖さも、そんな『有』などない、『無』なのだ。 白い個室という世界に、私はもう少しいることにした。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加