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「……はっ! またか、またお前か。どいてくれ、邪魔だ」
私は勢い良く椅子から立ち上がると、2階へと続く階段へと向かう為、目の前の目障りな女、嵯峨 里桜(サガ リオ)をどかし下へと降りる。
どかす際何か喚いていたが、何時ものことなので気にしない事にしていた。気にすると身が持たない。
私が2階に降りると、そこはこの家のキッチン兼リビングとなっているのだが、そこにも又、余り私の中で評価の良くない女がいた。もとより私の中で評価がいい人間等、極稀なのだが。
「あ、菊梨さん。おはよう。今、朝ごはん作ってるから、あの子の相手してあげてよ」
菊梨とは私の名だ。快活そうな気配が、私の苦手とする部類に入るこの女。いや、女というよりは少女かもしれない。
何しろ年は18歳。自分の夢であった大学に通う為、単身私の家に居候しているのである。ここ最近の慣れない同居生活に、私は常にストレスと疲労が溜まり気味なのだ。
この少女。髪を淡い茶色に染め、腰まで届く長いポニーテール、さらに持ち前の整った美麗な顔立ちから溢れ出る快活な気配。少女の名は片尾 紗螺(カタオ サラ)。
そして私の名は御堂 菊梨(ミドウ キクリ)。
とにかくこの少女が日々私の心を蝕んで行っているのだ。
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