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紗螺とは別段血の繋がりが有るわけでも、何か関係があったわけでもなかった。
ある日、私の母から一報が入る。確かその時はまだ晴れていた。もしかすると、雨が降り出したのはその時からかもしれない。
とにかく、その一報で紗螺はこの家で暮らす事になったのだ。
ただし家賃を免除する代償として、家事をできるだけこなす事を条件としている。
「なぁ、あいつ。どうにかならないのか? いい加減にしてくれないか」
革製のソファに身を投じ、黒のガラステーブルの上に無造作に置かれた新聞と広告、私宛ての手紙に目を通す。
新聞には、肥太った政治家が、その顔を柔和に歪ませ大衆に手を振る写真がでかでかと掲載されている。
広告も、余り代わり映えのない不動産の勧誘や、スーパーの呼び込みなど見ていてつまらない。
手紙には、私宛ての業務依頼が1件。同じ内容の物が先月辺りからほぼ毎日のように送られてきている。
内容も代わり映えがしない、
ライオンとタイガーの子が生まれる。助けてくれ。この二文を懇切丁寧にしたようなものだった。
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