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「どうにかって……診てあげて下さいよぉ。菊梨さん、獣医さんなんですから」 フライパンを振りながら、猫が甘えるような声で紗螺がねだる。 紗螺の言う通り、私は獣医だ。先程言っていた「後ろの者」達も、たくさんの患畜達である。 「獣医だからって、なんでもかんでも診ると思うな。俺は【動物】しか診ない」 「何でですか、列記とした動物じゃないですか」 私の辟易とした態度も気にかけず、紗螺はフライパンを降り続ける。 香ばしい匂いに釣られたのか、自分のハウスで眠っていた筈の私の愛犬、ラオが私に擦り寄って来た。 「あぁ、ラオ。私からは何も出んぞ。紗螺に行け、紗螺に」 軽く頭を撫でて促すと、賢いというか小賢しいというか、素直に紗螺の足元へ詰め寄る。 「もう、またはぐらかしてぇ。はーい、ラオちゃん。ご飯ですよ~」 ラオを利用して話を流したのがわかっているのか、いつも変わらない私の態度に呆れたのか、紗螺はフライパンを一時置き、ラオのフードを皿に盛る。 「そうですよ、先生~。いい加減逃げないで、ちゃんと診てくださいよ」 せっかくラオで解された私の精神が、一気に引き落とされる声が、私の背後から掛かった。
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