火種

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れた強者である。また、中学生の時は陸上部に所属し、全国大会で準優勝するなど、スポーツが大好きな女性である。中学生卒業後は進学はせず、体を動かしたいから、と安直な理由で自衛隊に入ったため、頭は良くはない。 「…キャベツ、いらない。…人参も要らない。…コロッケは衣だけ食べよう」  向かい側に座っている、恐ろしいほどの少食の偏食家は川崎祐也という23歳の工兵である。ヒョロヒョロの体に、暗い性格と工兵としては余りに頼りない存在だが、爆発物の取り扱いや、機械整備、破壊工作時の破壊場所の特定など多才な才能を持つ。彼が残した食事は基本的に稲山の腹に収まっている。現に、葉山と綾先の夕食を食べれなかった稲山が川崎の皿に箸を伸ばしている。  ズズッ  川崎の隣で食後のお茶をすすっているのは、篠沢源三郎。御年68歳になる、恐らく現在の陸上自衛隊の現役隊員最高齢の爺さんである。隊内では源ジイと呼ばれている。今のところ、特に何かに秀でているわけでもなく、小銃を持たせれば歩兵、自走砲に乗せれば砲兵、偵察に行かせれば偵察兵、通信機を持たせれば通信兵になる爺さんである。身体能力は人並みに維持しており、訓練や部隊行動に支障はない。
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