好きになったらダメですか?

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満開の桜並木の道を一人の少女は緊張を隠せない面持ちで歩いていた。 少女は時折止まってはため息を漏らし、また進んだかと思えば止まったりと何かに躊躇っていた。 季節感溢れる桜並木の道に似合わないどんよりとした雰囲気を滲ませながら。 (どうして、私ったらこんな学校に入っちゃったのかな──?) 彼女の名前は姫宮苺。この春に高校生になったばかりの少女だった。 「‥どうしよう…」 苺はとうとう足を止め道の端で座り込んだ。 端といっても丁度バス停の前だったせいもありベンチがあったためそのベンチに腰をかけずーん…と沈み込んだだけの話だが。 「今からでいいから中学に帰りたいっ…」 今更叶うわけがない願いを苺は半泣き状態で呟いた。 苺は幼稚園の頃から中学まではいわゆる私立の女学院に通っていた。 そのためか異性との出会いにはほとんど縁がなく、どちらかというと苦手意識の方が強くなってしまっていたのだった。 新しい学校に期待を膨らませてはいたものの、予想外に男子の数があったためか既に身体は恐怖と緊張でいっぱいいっぱいの状態になってしまったのである。 「どうしたら…いいのかなぁ‥?」 小さなため息を漏らして苺は空を見上げた。 桜の花びらがひらりひらりと舞う光景が春らしさを感じさせ、実に穏やかな空間だった。 ───やっぱり、今日は帰ろう。…お母さんに転入届けを出してもらわなくちゃ。 苺はそう思いふっと立ち上がった瞬間だった。
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