灰色な中学時代~序章~

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現実の世界ではなかなかグッドエンディングを見ることはできない。 この世の中には恋が実る人よりも、きっと恋に破れた人が多い筈だ。 かくいう僕もその一人。 恋の破れ方は凄惨を極め、絶賛トラウマ継続中だったりする。 だからこそ、せめて小説の中だけでも優しくて温かくて心休まる世界を書き綴りたいと思った。 僕にとって小説を書くということは、趣味の範囲ではなく、自分自身の救済に他ならない。 でも、その想いに気付き、応えてくれた人がいた。 それがメーテルさんだ。 空也と皐月の織りなす物語―――幼馴染の枠から恋人に至るまでの過程を書き綴る小説の裏に秘めた想いに気付いてくれた初めての人。 そんなメーテルさんだから、僕は空也と皐月を描いてほしかった。 どうか応えてほしいとディスプレイの前で願い続けること30分。 返信の早いメーテルさんにしては時間を要した長文の返信がようやく届いた。 『……わ、わかりました。 稚拙ながらお手伝いしたいと思います。 ほ、本音を言えば、私も風見鶏さんの描く世界にもっと触れてみたかったんです。 私、オタク趣味で友達も全然いないので、大好きなアニメキャラを描く時間だけが唯一心安らぐ瞬間だったんです』 メーテルさんの告白に心臓が即座に反応して心拍数をあげる。 何故ならPC画面の向こう側にもう一人の僕がいるような錯覚をしたからだ。 『独りぼっちに慣れているつもりでしたけど、やっぱり孤独なのは辛いなと思っていた時に……風見鶏さんの小説に出会ったんです』
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