灰色な中学時代~序章~

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正直似ていると思った。 僕とメーテルさんは同じような境遇の下、同じような孤独を感じているのではないだろうか? 誰かに近づきたい、親しくなりたいという願望があるにも関わらず、心を縛る『何か』が原因で身動きがとれずにいた―――今日までは。 『私、その、風見鶏さんの力になりたいんです。 独りぼっちだった私に温かい世界を見せてくれた恩返しをしたいんです。 だから、ご迷惑でなければお手伝いをさせてください。 お願いします』 きっと……その文面は悩みに悩んで書いたのだろう。 顔が見えない相手であろうと、メーテルさんは緊張と不安をごちゃ混ぜにして、必死に書きなれない文章を打った筈だ。 僕の抱くメーテルさんの印象から考えると、彼女はおそらく僕からの返事を不安げに心待ちにしているのだろう。 食い入るようにサイトのページを凝視して、震えているのかもしれない。 その時、普段の僕なら考えられない感情が湧きあがった。 緊張も不安もかき消される。 ただ、一分一秒でも早く。 僕の……僕の『想い』をメーテルさんに伝えたい。 自然とキーボードの上で指が踊るように動き、短い文章を作成した僕はエンターキーを叩いて送信をした。 『メーテルさん、僕と友達になってください』 彼女からの返事は今まで一番早いものだった。 『はい、喜んで。 あはは、私の友達第一号が風見鶏さんで良かったです』
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