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脳内で仮想メーテルさんを勝手に思い描く。
メーテルという名の如く、僕が思い描いた人物はあの高名な銀河を走る鉄道にでてくる女性にそっくりな人だ。
深窓の令嬢。
湖畔の似合うお嬢様。
憂いを帯びた微笑で僕を見つめる眼差し。
二人で寄り添い、手を繋ぎ、何をするでもなく、ただ……ただ、二人で異郷の地を目指す電車の旅を行う妄想。
そんな幸せな時間をずっと、ずっと過ごせたらいいのに……
瞼をゆっくりと開け、妄想から現実に帰ってくると、そこには最悪の光景が広がっていた。
「およよ? 愛しのmy darlingの嬉し恥ずかし妄想タイムはもう終わっちゃったのかにゃ?」
そこには、よ~く見知ったショートボブの女の子が、妄想をしていた僕以上にニヤニヤしながらベッドで添い寝をしていた。
「ちょ、ちょっと姉さん!? い、いつの間に僕の部屋に入ったのさ!?」
「ん~~あっしは愛しい弟の部屋に侵入するためなら物理法則を超越して、壁くらい楽勝で通過可能さ!」
上下、紺色のジャージを着こんだ色気も何もない格好の姉さんはベッドの上でドヤ顔で僕を見降ろしている。
だが、
「姉さん、思いっきり窓が開いているんだけど……」
僕はあくまで冷静に開け放たれたままの窓を指さし、溜息を吐いた。
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