灰色な中学時代~序章~

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「むぅ~~相変わらず無粋なことを言うね。 でも、そんなところもお姉ちゃんは大好きだぜ!」 ムギューッと姉さんこと、鈴宮真琴【すずみや まこと】に僕は抱き寄せられ、頬ずりをされ、挙句の果てに頬にキスの雨まで降らされる。 異常なまでの愛情を注ぐ我が姉上様―――だが、僕にとってこれは日常茶飯事だし、かくいう僕もちょっぴりシスコン気味なので、姉さんに可愛がられるのは別段嫌いじゃなかったりする。 「ん~~やっぱり『可憐』ちゃんを抱きしめると癒されるわ~~ん~~もっと、ちゅちゅしてやるぜぇ!」 「ちょっと姉さん、頬がくすぐったいよ。 それに、今日は朝から僕に甘えてきたんだから少しは自重してよ。 あと、一応思春期の真っ最中の男なんだから、『可憐』ちゃんと呼ぶのは控えてよ」 「え~~素敵なあだ名じゃん」 何が気に入らないのか心底わからないと言いたげに首を傾げる姉さんは、う~んう~んと唸り声をあげる。 本当に見ていて気持ちの良い姉さんだ。 思ったままに行動する猪突猛進な人。 顔立ちは女性として高得点、姉弟の贔屓目を差し引いたとしてもテレビに出てくるアイドルと同等以上のルックスを携えている。 特に好奇心からギラギラといつも輝いている瞳は魅力的で、何人もの男性が虜になったらしい。 だが、外見の美貌よりも特筆すべきは姉さんの性格だ。 誰かれ構わず困っている人がいたらどこからともなく参上して手助けをするお節介な人なのだ。 ただし……その裏には自分の行いが正義の名の下にあると本気で信じている愉快犯であることを述べなくてはならないだろう。 実際問題姉さんは困り事そのものを最終的に粉砕・爆砕すれば良いと思っている節があるので弟して心配してしまう。 色々と破天荒で問題だらけの人だが、僕はそんな姉さんを誰よりも信頼していると胸を張って言える。
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