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紙片に記録される借りた本のタイトル部分―――そこには借りた本の履歴ではなく、『今日も来てくれますか?』とのメッセージが達筆な字で残されていた。
この時のことを包み隠さず述べるなら……僕は完全に有頂天になっていた。
昨日、ネット上で初めての友達ができたことも、姉さんと一緒に心地良い眠りについたことも―――そして、図書室から去ると決めた覚悟も忘れて僕は浮足立つ心を抑えられずにいた。
え、え、ええ!?
これって……あの人からのメッセージだよね?
で、でも、何で!?
いや、でも、何かの冗談かも……いやいや、でも、ここまで手の込んだ真似をしなくてもいいじゃないか!
つまり、これは正真正銘の……寺野先輩からの……
脳内で図書室の片隅で恥ずかしそうにはにかみながら僕の姿を待つ寺野先輩の可愛い姿が浮かんでは消える。
繰り返し繰り返し、その姿を再生させては頭を振って、その妄想を振り払う。
周囲からは一人で奇抜な動きをする僕を訝しみ、時にぐちぐちと陰口を叩いているようだが、そんなことは些細なこと。
今の僕にとって大事なこと。
それは寺野先輩がどのような意図で僕を図書室へと誘っているのか、その一点に尽きる。
恋愛で浮かれっぱなしの中学二年生が、その後の授業をどのような態度で受けたのかは語るまでもないであろう。
いや、一つだけ、僕の惨状を紹介してあげよう。
この日行われた小テストを名無しで提出し、人生初の零点を頂戴するのであった―――だが、幸せでいっぱいだから後悔はないもんね!!
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