灰色な中学時代~序章~

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改めて図書室という名の蔵書保管室を見渡すが、本当にため息をつきたくなる。 「…………狭いよなぁ」 この部屋は本当に図書室なのかと疑いたくなるほど狭い。 なんせ30数名が義務教育を受ける教室より図書室の空間は窮屈だったりする。 僕が座る六人掛けの長机は二つ設置されているが、それだけで部屋の敷地の三分の一は失われている。 必然的に少しでも本を置きたい図書室の本棚は天井ギリギリの高さとなり、近年発育の良いとされる若者でも最上段の本は踏み台を用いなければ手が届かない。 まぁ、全国の平均身長を下回っている僕には関係のない話だ。 オホン、色々と話が錯綜している気がするから話を戻そう。 完結にいうなら、この図書室は人気がない。 ぶっちゃけ、この図書室で本を探すなら市営の図書館や近所のB○ok off(あんまり伏せ字な気がしないような……)に足を運んだ方が有益だろう。 そんな誰からも見放されても不思議ではない場所に何故僕がいるのか? 別に寝るためなら家に帰ればいい。 蔵書を漁る趣味があるなら街へと繰り出せばいい。 資料が無くてはできない宿題も出されていない。 だけど、僕にはこの場所で時間を浪費する理由があるのだ。 「……う~ん、そろそろ帰っても大丈夫かな?」 壁にかけられた時計に目をやると、時刻はまもなく5時になるところ、『普通』の中学生が帰宅するには頃合いだろう。 やれやれと、自分の情けなさを再認識して僕は苦笑してしまう。 「友達がいる偽装、か……」 そう、僕には……鈴宮暦【すずみや こよみ】には『とある理由』から友達がいないのだ。
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