†1章†目覚め、そして始まり

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老人は青年の頭を撫でる手をとめると、今度は肩に手を置き少し距離を離す。 そして青年の目を見詰め、真剣な表情で話し出した。 「そこでじゃ、お主には転生してもらおうと思うのじゃがそこで1つ提案がある。」 その言葉に青年は軽く首を傾げて話の続きを待つ。 「お主はそれは非道い人生を歩んできた。 だからどうせ転生するのだし、そんな人生は忘れて、もう一度赤ちゃんからやり直してみないか? しかも今度は暖かい家庭でじゃ。」 老人はニンマリと面白そうに笑いながら、青年に選択する時間を与えずに話を続ける。 「その記憶も力もそのままじゃから安心せい。 それに両親の暖かさぐらい知っておいて損はないじゃろうて。 うんうん、それがいい。」 老人は嬉しそうに勝手に話を続ける。だが青年も満更ではなさそうで、その頬を若干朱に染めて、期待に満ちた瞳を老人に向けていた。 「今度はちゃんと人並みに幸せな人生を歩のじゃよ? 苦しい事も悲しい事もあるじゃろうが、自分を見失う事なく己が信じる道を貫くのじゃ。 それじゃ行ってこい。」 そう言い老人は青年の頭に手を翳す。 次の瞬間には青年の姿はそこにはなくなっていた。 「ふぉっふぉっふぉ、どうなるか楽しみじゃわい。」 しかしそう言う老人の顔はどことなく寂しそうである。
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