777人が本棚に入れています
本棚に追加
老人は青年の頭を撫でる手をとめると、今度は肩に手を置き少し距離を離す。
そして青年の目を見詰め、真剣な表情で話し出した。
「そこでじゃ、お主には転生してもらおうと思うのじゃがそこで1つ提案がある。」
その言葉に青年は軽く首を傾げて話の続きを待つ。
「お主はそれは非道い人生を歩んできた。
だからどうせ転生するのだし、そんな人生は忘れて、もう一度赤ちゃんからやり直してみないか?
しかも今度は暖かい家庭でじゃ。」
老人はニンマリと面白そうに笑いながら、青年に選択する時間を与えずに話を続ける。
「その記憶も力もそのままじゃから安心せい。
それに両親の暖かさぐらい知っておいて損はないじゃろうて。
うんうん、それがいい。」
老人は嬉しそうに勝手に話を続ける。だが青年も満更ではなさそうで、その頬を若干朱に染めて、期待に満ちた瞳を老人に向けていた。
「今度はちゃんと人並みに幸せな人生を歩のじゃよ?
苦しい事も悲しい事もあるじゃろうが、自分を見失う事なく己が信じる道を貫くのじゃ。
それじゃ行ってこい。」
そう言い老人は青年の頭に手を翳す。
次の瞬間には青年の姿はそこにはなくなっていた。
「ふぉっふぉっふぉ、どうなるか楽しみじゃわい。」
しかしそう言う老人の顔はどことなく寂しそうである。
最初のコメントを投稿しよう!